全国初。
アスリートモデルを導入したのは福岡県最多の受験者数を誇る先進校。

九州国際大学付属高等学校

1930年創立の九州国際大学付属高等学校(以下、九国付)は、習熟度に合わせた多様なクラスに加えて、スポーツと勉学の両立を目指すトップアスリートクラスを開設するなど、受験勉強一辺倒ではない全人教育を目指している。

難関大学への進学実績はもちろん、野球・サッカー・陸上・バドミントンなど全国レベルで実績を残しており、2010年の男女共学以降、福岡県内で11年連続最多の受験数を集める九州屈指の人気校だ。

九国付がアディダスの体操服を導入したのは男女共学がきっかけだったが、導入から10年の区切りとなる2019年4月より、全国の学校で初となるアスリートモデルへと切り替えた。

アスリートモデルの導入秘話、従来のモデルとの違い、その効果をリポートする。

機能性・デザイン性の際立つ新モデルが、
九国付に新たな魅力を付加する。

アディダス導入のきっかけは、11年前の男子部と女子部の統合だった。当時を知る芹田先生にお話を伺った。

「新しい学校を創る上で、看板商品として注目を浴びるであろうブランドとしてアディダスを導入しました。今の生徒数を見ていただければわかるように、ブランドの効果は出ていると認識しています」と語る。現在の生徒数は約1,700名。

制服のリニューアルやカリキュラムの変更、新コースの設定に加えて、アディダスの体操服を導入したことも、入試広報活動の一環として、九国付ブランドの確立に貢献したと言ってよいだろう。それから1 0 年、体操服をモデルチェンジした理由は何だったのだろうか。

「私は九国付に33年いますが、生徒がどんどん変わっている様子を実感している。この10年でももちろん変わった。だからこそ、学校側の考えを押し付けるのではなく、生徒の感性を敏感に察知し、取り入れることが必要だと思った」という。

芹田先生は迷いのない口調で続けた。「中学までの義務教育とは違い、高校以降はすべてが選択できる。学力で選んで、進学実績で選んで、体操服で選んで総合的に九国付に来ている。学校側は生徒・保護者のその気持ちに応えなければならない」と。

アスリートモデル導入の根本はまさにそこにある。勉強だけでなくスポーツも盛んな九国付の生徒たちは、最先端のスポーツウェアを身につけている。だからこそ、スポーツウェアの機能性やデザイン性に慣れている生徒が納得するよう、体操服も進化する必要があるのだ。

時を同じくして、ADSSもまた、スポーツウェアに近づくことをコンセプトとした体操服の開発に着手していた。体操服に進化を求めていた九国付と、新しい試みを始めたADSSのタイミングが見事に一致していたのである。

試行錯誤を繰り返し行きついた、
生涯愛用できるかっこいい体操服。

アスリートモデル採用に際しては、サッカー、陸上、バレー、柔道など運動部の顧問だけでなく、普段運動をしていない先生も合わせて10人ほどで検討した。本間先生にその時の様子を伺った。

試作品を試着するための部屋にADSSの社員が待機し、ヒアリング調査を行ったのだが、「感想を求められて、先生たちは思ったことを遠慮なく言っていました。私は大きいのが好きだから細いのは嫌だとか、私は細いのがいいとか。ADSSさんは取りまとめが大変だったのでは?」と本間先生は苦笑い。その率直な意見が、より良い製品づくりに役立ったのは明らかだ。

試作品では、かなり細いシルエットもあったというが、「細すぎず、ゆとりがありすぎず、程よいところで落ち着きました」とのこと。

思春期の生徒にとっては見た目も問題。ダボっとした服の方が体型隠しになると思われがちだが、実際は体型に程よく沿った方がスッキリと見えることもわかったという。

「サイズをS・M・Lだけでなく、RM=リラックスMのように、丈はMサイズで横が若干ゆったりしているサイズを用意することで、いろんな体型の子にフィットしています」。例えば1 8 0㎝で1 0 0㎏ある生徒が横に合わせたズボンを選ぶと、従来は裾をズルズルと引きずることになるが、本モデルではそれがない。実際にR3XOを着る生徒も自然なシルエットととなり、スッキリして見えるのだ。

最終的に今のモデルに確定した決め手は何かと伺うと、「生徒に『着たい!』と言われることが一番の目標だったから、生徒が着た時に『かっこいい』と思えるかどうか」とのことだった。

今回の取材で何度も耳にしたのが、「卒業後もずっと愛用してもらえるように」という言葉。そのために、生徒がかっこいいと思える体操服であることは欠かせない要素。また、卒業後どんな場面でも着てもらえるよう校名を一切入れていないのも、新旧モデルで変わらない九国付のこだわりのようだ。

絶妙のフィット感と抜群の伸縮性は、
運動パフォーマンスを向上させる。

アスリートモデルの着心地や評判について、陸上部顧問の堀田先生に伺った。

「陸上選手としては、肩と足に注目します。動いたときに違和感のないことが重要ですが、アスリートモデルは伸縮性があって、股関節を回すときも横に広がる感じがいい。腿を上げたときも、つっぱる感じがありません」とのこと。

次に堀田先生は、腕を上げて脇のラインを指し示した。「ここにも、もたつきがないので、肩をまわしてもひっかからない」と。通常、ゆとりのある体操服は動きやすくはあるが、パフォーマンス向上のためには、そのゆとりが余分となる。その余分を排除しながら、窮屈さや動きにくさがなく、むしろ可動域を広げる。アスリートモデルの性能は、アスリートにも実感されていることがわかった。

長袖のジャージについては、旧体操服はかぶりタイプだったが、今回からはファスナー全開タイプも登場。「ジッパーを開けっ放しにするなど、着崩す生徒が出てくるかと思っていましたが、みんなきちんと着ている。立ち襟の高さが短めなのがちょうどいいのかも」とのこと。

さらに白色から紺色に変わったTシャツも女子生徒から大好評だという。今までは透けることを気にしてTシャツの下にもう1枚シャツを着こんでいたが、その必要がなくなったためだ。

また、九国付では、校外の陸上競技場を貸し切って毎年盛大な体育祭が行われる。競技場では短パン・長ズボンのどちらを着用してもいいが、1年生は長ズボンの着用が目立っていた。「膝裏にメッシュがあるので汗で蒸れない。『こっちの方が涼しい』と生徒たちは言ってました」。生徒は膝裏のメッシュが追加されたものであると意識していないが、無意識に最適なものを選んでいる。そのことがむしろ贅沢と言えるかもしれない。

令和新時代を創る生徒たちへ、
本物に触れる大切さを伝えたい。

九州国際大学付属高等学校は、1930年の創立以来、7万人以上もの卒業生を全国に送り出しました。2010年の男女共学化以来、福岡県内で11年連続最多の受験者数を集めていますが、これは、大学進学を人生の通過点と見据えた豊富なキャリア教育、充実した進路サポートなどが評価されての結果だと思っています。

生徒たちが高校で過ごす3年間は、将来の基盤となる大事な時期。生徒にとって魅力ある学校であるために、私たちができることは何かをいつも考えています。

2019年度からは生徒1人に1台、タブレット型PCを必携としました。一方で、博多座で歌舞伎を鑑賞するようにもしました。

時代の最先端に触れつつ、日本の伝統文化にも触れる機会を持たせたい。若いその瞳に本物を見せたいのです。

体操服がアディダスであるのも同じです。世界のブランドに触れないといけない。高校生がアディダスを着て体育の授業を受けていることに、みなさん驚かれるし、生徒も喜んで着ている。「いいものはいい」という感覚は、本物に触れることでわかる。どう感じるかは自由です。

体験してどう感じたか、互いに議論をしたらいいんです。それが未来の自分を作っていくと思います。

令和という新しい時代を創り出す生徒たちは、生きていく上で、不本意ながらしないといけないことにも直面するでしょう。「どうせしないといけないなら、楽しくしよう!」と、生徒たちには言っています。

「楽しい顔をしているとプラスの因子がつくぞ」と。生徒たちがどんな時代を歩んでくれるか、楽しみにしています。